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秋山 基夫 | (毎月2回更新) |
第18回 天麩羅蕎麦 漱石の「坊っちゃん」に出てくる天麩羅蕎麦の話だ。坊っちゃんが散歩していると東京と注を加えた蕎麦の看板を見つけた。隅っこの席で中学生がちゅるちゅるすすっていた。天麩羅蕎麦がうまかったので四杯食った。翌日黒板に天麩羅先生と大書してあり、四杯はすぎるぞな、もし、とぬかした。明治になって蕎麦は都会の洗練された食い物になった。鮨屋の刺身と並んで蕎麦やの天麩羅はうまいと決まっているが、坊っちゃんは何を食ったのか。立ち食いソバの掻き揚げではなくエビの大きなのがのっかっていたのか。それでは中学生には高すぎると思うが、エリート意識の強い彼らは生意気に東京の蕎麦を食ったかもしれない。わたしはじゃこ天みたいなものがのっかっていたのではないかと思っている。 |